うつ病の特徴

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 うつ病の場合、最初に精神科を受診しないことも多く、初診日の証明は注意が必要です。例えば、最初に内科を受診し、その後に精神科を受診した場合、内科が初診ということになります。

 またサラリーマンとして勤めているときにうつ病などにかかり、通院したことがあれば、障害年金は3級まで認定対象となります。通常は2級までの認定ですから、障害年金が受給しやすいということになります。

 うつ病を含めた精神障害の場合、医師が日常生活能力の判断を行うことは難しく、実際のレベルと異なる診断書が出来上がることも珍しくありません。

 医師との面談は短時間であり、自分の症状を的確に医師に伝えることは大事です。常日頃から自覚症状や日常生活で困っていることなどをメモをしておき、医師との面談の際に渡しておくことは効果的です。

 また、医師に診断書を依頼する際に、参考情報として自己申告の資料を添付するのも効果的です。専門家である社労士に障害年金の請求を委託した場合、この診断書の依頼と受け取り時の確認及び訂正依頼などを適切、迅速に行うことができます。


 うつ病が障害の状態に該当するかどうかは、障害認定基準(厚生労働省の通知)に以下の記載があります。

 

障害認定基準のうつ病関連の抜粋

1級 気分(感情)障害(うつ病を含む)によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの
2級 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級 (厚生年金保険加入時の初診のみ)
気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの


 具体的には医師が作成する診断書の記載によりますが、以下の項目が特に重要です。
 以下は診断書の抜粋です。

診断書の抜粋・日常生活能力の判定(該当するものにチェックをしてください。)
(判断にあたっては、単身で生活するとしたら可能かで判断してください。)

(1)適切な食事−配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど。
 □できる
 □自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
 □自発的かつ適正に行うことてはできないが助言や指導があればできる
 □助言や指導をしてもできない若しくは行わない

(2)身辺の清潔保持−洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができるなど。
 □できる
 □自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
 □自発的かつ適正に行うことてはできないが助言や指導があればできる
 □助言や指導をしてもできない若しくは行わない

(3)金銭管理と買い物−金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど。
 □できる
 □おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
 □助言や指導があればできる
 □助言や指導をしてもできない若しくは行わない

(4)通院と服薬(要・不要)−規則的に通院や服薬を行い、症状等を主治医に伝えることができるなど。
 □できる
 □おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
 □助言や指導があればできる
 □助言や指導をしてもできない若しくは行わない

(5)他人との意志伝達および対人関係−他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるなど。
 □できる
 □おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
 □助言や指導があればできる
 □助言や指導をしてもできない若しくは行わない

(6)身辺の安全保持および危機対応−事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。
 □できる
 □おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
 □助言や指導があればできる
 □助言や指導をしてもできない若しくは行わない

(7)社会性−銀行での金銭の出し入れや公共施設の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続きが行えるなど。
 □できる
 □おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
 □助言や指導があればできる
 □助言や指導をしてもできない若しくは行わない


日常生活能力の判定・コメント
一般的に以下のように該当すると言われています。

  •  「できる」にほとんどが該当するようであれば障害の状態にないレベル
  •  「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」にほとんどが該当するようであれば3級レベル
  •  「助言や指導があればできる」にほとんどが該当するようであれば2級レベル
  •  「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」にほとんどが該当するようであれば1級レベル

 

診断書の抜粋・日常生活能力の程度(該当するもの一つを○で囲んでください。)

  日常生活能力の程度 等級の想定レベル
(1) 精神障害(病的体験・残遺症状・認知症・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。 障害の状態にないレベル
(2) 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
(たとえば日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難を生じることがある。社会行動や自発的な行動が適切に出来ないこともある。金銭管理はおおむねできる場合など。)
3級もしくは障害の状態にないレベル
(3) 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
(たとえば習慣化した外出はできるが、家事をこなすために助言や指導を必要とする。社会的な対人交流は乏しく、自発的な行動に困難がある。金銭管理が困難な場合など。)
2、3級レベル
(4) 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
(たとえば著しく適正を欠く行動が見受けられる。自発的な発言が少ない。あっても発言内容が不適切であったり、不明瞭であったりする。金銭管理ができない場合など。)
2級レベル
(5) 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
(たとえば家庭内生活においても食事や身のまわりのことを自発的にすることができない。また在宅の場合に通院等の外出には、付き添いが必要な場合など)
1級レベル

等級判定のガイドラインも併せてチェック!(日本年金機構ホームページより。7頁(印刷上5頁)参照)

うつ病の障害の状態で不服申立てが行われた例

Q&A

働くと障害年金はもらえなくなるの?

精神障害の場合、働くと障害年金が受給できなくなったり、等級が下がったりすることがあります。【例1】うつ病で、障害基礎年金の2級を受給している方が働いた場合、次の更新では障害基礎年金が受給できなくなる可能性が高くなります。障害基礎年金には3級がないからです。
 2級は、「必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの」(障害認定基準)という基準となっています。働くことができる場合、2級には該当しません。
 但し、家計が苦しいため無理して数日間働いた場合や、リハビリを兼ねて週2、3日出勤した場合など、労働した事実だけをもって2級に該当しないとは言えないでしょう。行政側は、この働いたという事実だけをもって2級には該当しないと判断する場合があります。

【例2】うつ病で、障害厚生年金の3級を受給している方が働いた場合、次の更新では障害厚生年金が受給できなくなる場合もあります。
 3級は、「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度
のもの」(障害認定基準)という基準となっています。フルタイムで働くことができる場合、ましてや残業までできる場合は3級には該当しません。
 但し、短時間勤務で働いた場合や、単純労働だけに限定している場合など、会社側が相当の支援をしている場合は、3級に該当しないとは言えないでしょう。行政側は、この事実確認を行わず、3級には該当しないと判断する場合があります。

うつ病の障害の状態で不服申立てが行われた例

躁うつ病【3級認定】  平成20年(厚)第662号


診断書の内容を以下に示す(診断書の内容は旧様式です)。

日常生活能力の判定 

判定項目 評価
身辺の清潔保持 自発的にはできないが援助があればできる
金銭管理と買物
他人との意志伝達及び対人関係
身辺の安全保持及び危機対応
適切な食事摂取 自発的に又は概ねできるが援助が必要
通院と服薬(要)

日常生活能力の程度

(3) 「精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。」
「日常生活活動は一応自立している」

 

※現在の等級判定ガイドラインだと、2.6×(3)であり、2〜3級の評価である。迷うところであるが、「日常生活活動は一応自立している」の表記で3級と認定したか。

うつ病【3級不該当】  平成21年(厚)第109号 

 

診断書の内容を以下に示す(診断書の内容は旧様式です)。

日常生活能力の判定

判定項目 評価
適切な食事摂取 自発的にはできないが援助があればできる
身辺の清潔保持
他人との意志伝達及び対人関係
金銭管理と買物 援助があれば概ねできる
通院と服薬
身辺の安全保持及び危機対応

日常生活能力の程度

(3) 「精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。」

 

その他の認定内容

・服薬内容も軽い精神安定剤・消化性潰瘍用剤の通常量服薬と
いった同じ内容が継続されている。
・診療録に「何とかやっている。仕事に集中する。寝るようにしている。セルフコントロールできる。」といった旨を記載されるような状態であった。
・請求人は、妻、上司、同僚の援助が必要ではあったにしても、
残業もこなしつつ、本来業務を遂行していた。


診断書は3級相当であるが、労働をしていることで3級不該当と裁定されたもの。残業をしていた点で、やむを得ない裁定であったと考える。
  (※現在の等級判定ガイドラインだと、2.5×(3)であり、2〜3級の評価となる)

神経症性うつ病【2級不該当】  平成20年(国)第528号

 

診断書の内容を以下に示す(診断書の内容は旧様式です)。

日常生活能力の判定

判定項目 評価
適切な食事摂取 自発的にできないが援助があればできる
身辺の清潔保持
金銭管理と買物
他人との意志伝達及び対人関係
身辺の安全保持及び危機対応
通院と服薬 概ねできるが援助が必要

日常生活能力の程度

(3) 「精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。」
「労働は不能」

 その他の認定内容

病状又は状態像として、抑うつ状態、他が認められ、無気力で何をするのも億劫で、家事は父親がしており、視線が気になり他人と会うのを避け、引きこもりの状態である。

 

 

 

微妙なレベル。「労働は不能」と書かれているだけで、日常生活に支障があることが書かれていなかったため、3級に裁定されたものと考える。
   (※現在の等級判定ガイドラインだと、2.8×(3)で、2〜3級の評価)


うつ病【2級不該当】  平成21年(国)第130号

 

診断書の内容を以下に示す(診断書の内容は旧様式です)。

日常生活能力の判定

判定項目 評価
適切な食事摂取 自発的に又は適切にできる
金銭管理と買物
通院と服薬
身辺の清潔保持 援助があれば自発的に又は概ねできる
他人との意志伝達及び対人関係
身辺の安全保持及び危機対応

日常生活能力の程度

日常生活能力の程度は(2)「精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活上困難がある。

その他の認定内容

請求人の障害認定日当時の当該傷病による障害の状態は、病状又は状態像として、抑うつ状態「略」と軽度の精神遅滞が認められ、午前中は気分がおちこみ、症状の変動があり、身体化症状と思われる左腹痛は時に増悪し、日常生活において困難なことがあると不安や抑うつを生じることがあるとされているものの、抑うつ気分は初診時に比べると改善傾向にあるとされている。

 

診断書が正しいとすると、3級にも該当しないと考える。妥当な裁定。
(※現在の等級判定ガイドラインだと、1.5×(2)であり、3級または3級非該当の評価)

 

 

うつ病の当事務所事例

当事務所で取り扱った、うつ病の事例を紹介します。

事例1.うつ病 障害基礎年金の認定日請求(認定日は1年超前) 64歳女性(平成29年)

入院歴はないが、入院先の病院を検討しているほど状態は悪かった。

・認定日診断書 3.0×(4) 結果2級(等級目安2級)
・現症診断書  3.5×(5) 結果2級(等級目安1級)

夫の老齢厚生年金の加算対象になっていたため、返納が必要となる(わかっていたこと)。日本年金機構は途中の段階で2級決定の見込みだと言い、先に夫の「加給年金額支給停止事由該当届」及び「返納方法申出書」を提出することよう求めた。夫の「加給年金額支給停止事由該当届」及び「返納方法申出書」を提出しなければ、本人の障害基礎年金の決定ができないという。「加給年金額支給停止事由該当届」には、配偶者の「年金を受けることとなった年月日」を書く欄があり、まだ決定していない日付を書くのも順序がおかしい。また夫婦とはいえ別人格であり、法的にも疑問を感じるものの、決定が遅れることを危惧して日本年金機構の指示に応じた。

現症の診断書は1級相当ではあるが、入院歴もないため、障害等級2級の決定に不服は無かった。

 

事例2.うつ病 障害基礎年金の事後重症請求 50歳代男性(平成29年)

3ヶ月ほど前まで2ヶ月ほど入院していた。初診日は3年前。悪化したのは最近とのことで事後重症請求とした。

・現症診断書  3.2×(4) 結果2級(等級目安2級)

保険料納付要件の2/3要件を満たすため、大学生時代の確認のため、在籍期間証明書を提出した。大学生は平成3年3月まで任意加入であったので、この期間は除外される。

 

事例3.うつ病 障害厚生年金の障害認定日請求(認定日は1年超前) 50歳代男性(平成28年)

入院歴なし。休職して8ヶ月ほど経過した時期に請求した。精神障害者手帳3級保持。

・認定日診断書 3.2×(4) 結果3級(等級目安2級。復職リハプログラム中)
・現症診断書  3.4×(4) 結果3級(等級目安2級。休職後8ヶ月経過)

認定日の診断書は、休職して1年経過後の復職リハプログラム中。その後復職して、再度休職して8ヶ月経過して、請求となる。就労状況から、障害等級3級は致し方ないと判断。その後復職することなく、退職。請求から1年後、額改定請求(3.7×(4):1級又は2級相当)をして2級に改定された。

 

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