線維筋痛症

 線維筋痛症は、難病の一つであり、原因不明の病気です。全身の激しい疼痛が主症状で、それに付随して疲労感・倦怠感、しびれ、睡眠障害などがあります。長期間にわたる激しい疼痛のため、QOL(生活の質)が著しく低下します。
 問題は、血液検査やX線検査では異常がでないため、傷病名がつかなかったり誤診したり、また適切な診療が受けられないことがあります。最近でこそ、この病気の認知度が高まってきましたが、まだまだです。
 線維筋痛症という診断がされる前に、かなり以前から適切な治療を求めていろいろな医療機関を転々とする方も多くなります。このため、初診日の証明が難しくなることがあります。
 線維筋痛症での初診日の認定は流動的と感じます。ずっといろんな病院にかかっていても、傷病名が確定した段階、またはそれに近い段階での初診日認定が多いようにも感じています。

 障害年金では保険料納付要件が問われます。初診日がどこになってもいいように、国民年金保険料の納付や免除・猶予手続きは忘れないようにしてください。

 

初診日の事例はこちら

・仲間作りや情報収集は線維筋痛症友の会で。線維筋痛症友の会ホームページはこちら

診断書

 線維筋痛症では、肢体の診断書を使用します。その肢体の機能の障害について、障害認定基準(厚生労働省)に以下の記載があります。

障害認定基準から「肢体の機能の障害」の認定基準

1級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 (厚生年金保険加入時の初診のみ)
身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

 肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。
 なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。


 上記の認定基準の通り、線維筋痛症では日常生活における動作が重要になります。診断書上の日常生活における動作については以下に抜粋します。これらについて、医師の前で試すことは時間的な制約があるため、診断書作成依頼時に書面にて自己申告し、医師の所見にゆだねることが望ましいと考えます。

診断書(肢体)の日常生活における動作の障害の程度

補助用具を使用しない状態で  ・一人でうまくできる場合には…………………「○」
判断してください。      ・一人でできてもやや不自由な場合には……「○△」
               ・一人でできるが非常に不自由な場合には…「△×」
               ・一人で全くできない場合には…………………「×」
日常生活における動作
 aつまむ      (新聞紙が引き抜けない程度)    
 b握る       (丸めた週刊誌が引き抜けない程度)    
 cタオルを絞る   (水をきれる程度) 両手
 dひもを結ぶ 両手 
 eさじで食事をする    
 f顔を洗う     (顔に手のひらをつける)    
 g用便の処置をする (ズボンの前のところに手をやる)    
 h用便の処置をする (尻のところに手をやる)    
 i上衣の着脱    (かぶりシャツを着て脱ぐ)  両手 
 j上衣の着脱    (ワイシャツを着てボタンをとめる)  両手 
 kズボンの着脱   (どのような姿勢でもよい)  両手 
 l靴下を履く    (どのような姿勢でもよい)  両手 
 m片足で立つ    
 n座 る〔正座、横すわり、あぐら、脚なげだし〕
          (このような姿勢を持続する)
 両足  
 o深くおじぎ(最敬礼)をする  両足 
 p歩く(屋内)  両足 
 q歩く(屋外)  両足 
 r立ち上がる □支持なし
でできる
□支持があればできるがやや不自由
□支持があればでき
るが非常に不自由
□支持があってもできない
 s階段を上る □手すりなし
でできる
□手すりがあればできるがやや不自由
□手すりがあればできるが非常に不自由
□手すりがあってもできない
 t階段を下りる □手すりなし
でできる
□手すりがあればできるがやや不自由
□手すりがあればできるが非常に不自由 □手すりがあってもできない


 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりです。

障害認定基準から「肢体の機能の障害」各等級の一部例示

障害の程度 障 害 の 状 態
1級 1. 一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの
※「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいう。
2. 四肢の機能に相当程度の障害を残すもの
※「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合【×】」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合【△×】」をいう。
2級 1. 一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの
2. 四肢に機能障害を残すもの
※「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合【×】」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合【○△】」をいう。
3級 一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの


 また、線維筋痛症の場合、診断書のH「現在までの治療の内容、期間、経過、その他参考となる事項」に重症度分類試案のステージのいずれに該当しているか記載いただく必要があります。重症度分類試案は以下のとおりです。

線維筋痛症の重症度分類試案(厚生労働省研究班)

ステージ 障害の状態 予想等級
T 米国リウマチ学会診断基準の18ヵ所の圧痛点のうち11ヵ所以上で痛みがあるが、日常生活に重大な影響を及ぼさない。
U 手足の指など末端部に痛みが広がり、不眠、不安感、うつ状態が続く。日常生活が困難。 3級
V 激しい痛みが持続し、爪や髪への刺激、温度・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが全身に広がる。自力での生活は困難。 2級
W 痛みのため自力で体を動かせず、ほとんど寝たきりの状態に陥る。自分の体重による痛みで、長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない。 1・2級
X 激しい全身の痛みとともに、膀胱や直腸の障害、口の渇き、目の乾燥、尿路感染など全身に症状が出る。普通の日常生活は不可能。 1級

 

 診断書は、肢体の診断書であるため、原則として関節可動域の測定が必要です。主治医に障害年金の診断書が書けるか、相談してみてください。整形外科やリウマチ科、ペインクリニックなどが主な診療科になります。

肢体の診断書はこちら(日本年金機構ホームページ・ケース55)

「線維筋痛症の障害状態について診断書を作成されるお医者様へ」(線維筋痛症の重症度分類試案)はこちら

厚生労働省が2級とする認定事例はこちら

厚生労働省が3級とする認定事例はこちら

線維筋痛症の診断書認定事例2級(厚生労働省作成)

以下は、厚生労働省が作成した2級と認定する事例です。

線維筋痛症の重症度分類試案

ステージV(激しい痛みが持続し、爪や髪への刺激、温度・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが全身に広がる。自力での生活は困難。)

 

M握力、O関節可動域及び運動筋力

M握力 右3kg、左3kg  O関節運動筋力 左右とも、すべて「半減」

 

Q日常生活における動作の障害の程度

補助用具を使用しない状態で  ・一人でうまくできる場合には…………………「○」
判断してください。      ・一人でできてもやや不自由な場合には……「○△」
               ・一人でできるが非常に不自由な場合には…「△×」
               ・一人で全くできない場合には…………………「×」
日常生活における動作
 aつまむ      (新聞紙が引き抜けない程度) ○△ △×
 b握る       (丸めた週刊誌が引き抜けない程度) ○△ ○△
 cタオルを絞る   (水をきれる程度) 両手     △×
 dひもを結ぶ 両手     ○△
 eさじで食事をする ○△ △×
 f顔を洗う     (顔に手のひらをつける) ○△ ○△
 g用便の処置をする (ズボンの前のところに手をやる) ○△ ○△
 h用便の処置をする (尻のところに手をやる) ○△ ○△
 i上衣の着脱    (かぶりシャツを着て脱ぐ)  両手     ○△
 j上衣の着脱    (ワイシャツを着てボタンをとめる)  両手     ○△
 kズボンの着脱   (どのような姿勢でもよい)  両手     ○△
 l靴下を履く    (どのような姿勢でもよい)  両手     ○△
 m片足で立つ △× △×
 n座 る〔正座、横すわり、あぐら、脚なげだし〕
          (このような姿勢を持続する)
 両足     △×
 o深くおじぎ(最敬礼)をする  両足     △×
 p歩く(屋内)  両足     △×
 q歩く(屋外)  両足     △×
 r立ち上がる □支持なし
でできる
□支持があればできるがやや不自由
■支持があればでき
るが非常に不自由
□支持があってもできない
 s階段を上る □手すりなし
でできる
□手すりがあればできるがやや不自由
■手すりがあればできるが非常に不自由
□手すりがあってもできない
 t階段を下りる □手すりなし
でできる
□手すりがあればできるがやや不自由
■手すりがあればできるが非常に不自由 □手すりがあってもできない


R補助用具使用状況

杖 常時(起床より就寝まで)使用。屋外でいつも使用している。屋内では壁、手すりを使う。

 

Sその他の精神・身体の障害の状態

全身の疼痛にさいなまれており、抑うつ気分も伴い、精神的には重度のストレスを自覚している。熟睡することができず、睡眠不足の状態が続いており、抗不安薬や睡眠薬も投与している。

 

現症時の日常生活活動能力及び労働能力

全身の疼痛のため、日常生活は著しく阻害されている。一挙手一投足に痛みを自覚するため、労働も困難である。

 

 認定

障害の程度は、激しい痛みが持続しているため、日常生活動作のほとんどが一人でできてもやや不自由な場合、又は一人でできるが非常に不自由な場合となっており、線維筋痛症の重症度分類試案の「ステージV」と評価されているが、全身に痛みが広がっていることから、「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」に該当すると認められるので、2級15号と認定される。

 

線維筋痛症の診断書認定事例3級(厚生労働省作成)

以下は、厚生労働省が作成した3級と認定する事例です。

線維筋痛症の重症度分類試案

ステージU(手足の指など末端部に痛みが広がり、不眠、不安感、うつ状態が続く。日常生活が困難。)

 

M握力、O関節可動域及び運動筋力

M握力 右4kg、左10kg  O関節運動筋力 右「やや減〜半減」、左「正常〜半減」

 

Q日常生活における動作の障害の程度

補助用具を使用しない状態で  ・一人でうまくできる場合には…………………「○」
判断してください。      ・一人でできてもやや不自由な場合には……「○△」
               ・一人でできるが非常に不自由な場合には…「△×」
               ・一人で全くできない場合には…………………「×」
日常生活における動作
 aつまむ      (新聞紙が引き抜けない程度) ○△
 b握る       (丸めた週刊誌が引き抜けない程度) ○△
 cタオルを絞る   (水をきれる程度) 両手     ○△
 dひもを結ぶ 両手     ○△
 eさじで食事をする △×
 f顔を洗う     (顔に手のひらをつける) ○△
 g用便の処置をする (ズボンの前のところに手をやる) ○△
 h用便の処置をする (尻のところに手をやる) ○△
 i上衣の着脱    (かぶりシャツを着て脱ぐ)  両手     ○△
 j上衣の着脱    (ワイシャツを着てボタンをとめる)  両手     ○△
 kズボンの着脱   (どのような姿勢でもよい)  両手     ○△
 l靴下を履く    (どのような姿勢でもよい)  両手     ○△
 m片足で立つ × ○△
 n座 る〔正座、横すわり、あぐら、脚なげだし〕
          (このような姿勢を持続する)
 両足     △×
 o深くおじぎ(最敬礼)をする  両足     ○△
 p歩く(屋内)  両足     ○△
 q歩く(屋外)  両足     ○△
 r立ち上がる □支持なし
でできる
■支持があればできるがやや不自由
□支持があればでき
るが非常に不自由
□支持があってもできない
 s階段を上る □手すりなし
でできる
■手すりがあればできるがやや不自由
□手すりがあればできるが非常に不自由
□手すりがあってもできない
 t階段を下りる □手すりなし
でできる
■手すりがあればできるがやや不自由
□手すりがあればできるが非常に不自由 □手すりがあってもできない


R補助用具使用状況

壁などをつたいながら。屋外では壁や道具などにつかまりながらつたい歩きをしている。

 

Sその他の精神・身体の障害の状態

痛みにより心身不安定、不安感、軽度の抑うつ気分がある。

 

現症時の日常生活活動能力及び労働能力

痛みにより立ち上がり〜立位、歩行バランスが悪く転倒の危険性がある。また姿勢を保つことが難しいため、長時間の労働はできない。

 

 認定

障害の程度は、腰臀部、両側肩甲帯部、一下肢に激しい痛みが出現しており、日常生活動作のほとんどが一人でできてもやや不自由な場合となっている。また、線維筋痛症の重症度分類試案の「ステージU」と評価されていることから、「労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」に該当すると認められるので、3級12号と認定される。

 

線維筋痛症の初診日<事例1>

すべては平成11年7月の交通事故によるムチウチから始まったとご本人、ご家族がおっしゃる。

@平成11年7月〜平成15年3月整形外科、麻酔科 頸部痛、頚椎症、頸椎捻挫、外傷性頸部症候群、末梢性神経障害、両肩痛、右上肢痛、頚腕症候群など、いろいろな傷病名がつく。神経ブロック注射とリハビリを実施。
 A平成15年4月〜平成19年整形外科、麻酔科 神経ブロック注射を定期的に実施。だんだん通院間隔は長くなる。
 B平成20年1月〜整形外科 左肩腱板損傷手術
 C平成21年10月救急 激しい胸痛あり。救急で受診も、原因不明。
 D平成22年7月〜23年10月某クリニック ここで初めて線維筋痛症の疑い有りと言われる。
 E平成22年8月救急 激しい胸痛あり。救急で受診も、原因不明。
 (略)
 F平成23年8月〜大学病院リウマチ科 線維筋痛症の専門病院を受診。線維筋痛症との確定診断を受ける。


認定結果

上記の経緯で、初診日は交通事故で提出した。その後、CDの受診状況等証明書の作成と、Fの現医師にCDと病気との因果関係を確認する照会が入り、F現医師はCDともに因果関係有りとの判断。
結局、C平成21年10月が初診日となり、交通事故から10年ほど経過した日での認定であった。この初診日による不利益はないため、認定を受け入れた。

線維筋痛症の初診日<事例2>

子供のころから痛みを自覚していた。以下の経緯で、初診日は23歳(A)であるとして請求した。

@12歳頃〜23歳頃
学生時に健康診断で側弯症との指摘あり。たびたび痛みを自覚していたが、病院へは行っていない。22歳で就職。
A23歳(A病院整形外科)
痛みがあり受診。軽度側弯の指摘。血液検査にて異常を認めず。
B24歳〜26歳(B病院、C病院、Dクリニック、Eクリニック、Fセンター)
いろいろ受診したが、いずれも原因ははっきりしない。
C26歳(G病院)
乗車中に後ろから追突される。首に激痛ありで受診。
D26歳(Fセンター)(Cと同月)
その後激痛のため入院。膠原病内科の医師により、「線維筋痛症」と診断され、点滴・内服開始。
(以後省略)


認定結果

 日本年金機構は、Dの「線維筋痛症」確定診断の月を初診日と認定した。この初診日による不利益はないため、認定を受け入れた。認定日請求に変更することもできたが、認定日の頃の医師に診断書作成を断られたため、事後重症請求のままとした。
 診断書は、ステージV(激しい痛みが持続し、爪や髪への刺激、温度・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが全身に広がる。自力での生活は困難。)、握力(0kg、2kg)、Q日常生活における動作の障害の程度は、全て「△×」又は「×」の状態であり、2級に認定された。

 

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